万有引力「邪宗門」 座 高円寺
入場すると、舞台の上では黒子の格好をした者が動き回る。
8ビートに合わせて、縄をタテ、ヨコ、右、左に引くような動作。これを繰り返す。とんでもないミニマルアートに触れているような夢見心地で、開演前から感嘆のため息。
邪宗門は、天井桟敷が1971年にフランスで初演したものだそうだ。寺山没後30年と万有引力の結成30年を記念しての本日の公演。
素晴らしく、筆舌に尽くしがたいが、ときたま現代のアイコンであるような言葉(ミヤネ屋など)で観客の笑いをひくような場面があり、そのたびに興ざめしてしまった。
トイレに行った時、こんなことを言っている人が居た。「JAシーザーの音楽が素晴らしすぎてね。まあ劇は…余興みたいなもんだね」と。
まあ言いたいことは分からなくもないが、演劇のために創られた音楽を、演劇と切り離したところで褒め称えるのも…などと思いながら、会場を後にした。
毛皮族「ヤバレー、虫の息だぜ」 座・高円寺
毛皮族「ヤバレー、虫の息だぜ」
約1時間50分に及ぶ大作だった。ストリップショーのステージ。楽屋を舞台とした、ストリップ劇場の踊り子たちの劇。毛皮族と言えば…ニップレス。ニップレス!!
ほぼ全裸状態で舞台を駆け回る、綺麗なお姉様方(毛皮族メンバー)。
潔い!いやらしさが一切なく、素晴らしい。
踊り子の楽屋で面白かったシーンは、江本純子さんが演じる海外から来たらしい新入りの踊り子が、おっぱい丸出しで現れたところ。
ステージのシーンでは、高野ゆら子さんだけカマなものを忘れて、持たずにステージにあがってしまい、あわあわしていたシーン。手ぬぐいを頭に巻き、ふんどしのようなものを腰に巻いて「コンテンポラリ~~~~~~」と叫ぶ姿。滑稽すぎる!!
皆すごく美人で身体も綺麗なのに、体当たりで究極に馬鹿なものを大真面目にやっている、大真面目に。なんてすごいんだろう。
中途半端さが一切見られない。
本当にすごい!突き抜けている、毛皮族!!!!
本当に観に行って良かった。10年の演劇の積み重ね、毛皮族の歴史をここに見た。
WWW presents「 夏の幻」@渋谷WWW
WWW企画によるイベント「夏の幻」を観てきた。
うつくしきひかり/平賀さち枝/石橋英子/寺尾紗穂、豪華な4組。
最近は、女性シンガーソングライターの活躍が目覚ましいなあ。
今日は、すっかり寺尾紗穂さんの虜となってしまった。
1曲目は富士山。フォルテッシモで、力いっぱいに奏でるメロディーに乗せられる言葉は、寄る辺のない気持ちを誘う。
老いぼれロバの歌、うすばかげろうなど、生き物の生死がテーマとなっている歌に、心を抉られて号泣してしまった。
幼少時代に、母が読み聞かせてくれた絵本の中の悲しい物語のようだった。
特に、うすばかげろう。
寺尾さんは、幼虫時代の獰猛さを償うように儚く死にゆくうすばかげろうのお話をしてくださった。
「本当の生き方を教えて」と、うすばかげろうに優しく問いかける。
今、自分の生き方をどうこう語れるような術は持ち合わせていないが、なんとなく胸を張れるものでもないし、邪まな気持ちがときおり疼くので、私もうすばかげろうに聞いてみたい。
快の感情に塗れて生きるよりも、孤高の悲しみや苦しみの中から創り出された諦観を持ち合わせた人間でありたい。快の感情への羨望や渇望を忘れず、日陰に佇んで居たい。そういう、置き去りにしてはいけない大切な感情をぬるぬると引き出してくれるのが、寺尾さんの歌だなあと思った。
家に帰って、いろいろと調べてみると、なんと寺尾さんは「評伝川島芳子 - 男装のエトランゼ」という本を書かれているではないか。修士論文が書籍化するなんて、凄いなあ。
なぜ川島芳子という人物を研究したのか、どのような視点で川島芳子を描いたのか、を知ることでまた彼女の世界を一つ知ることが出来そう。
早速、注文してみた。
早く読みたいな。
やんてらの晩夏の企画 灰野敬二+吉田隆一@合羽橋なってるハウス
やんてらさん企画、14回目の企画ライブということ。
灰野敬二、吉田隆一のDuo。
今年入って観たものの中で、1、2位を争うくらいの素晴らしいライブだった。
とにかく、お二方の相性が良過ぎて痺れた。
ライブは2部構成で、1部は約1時間という長丁場だった。
1部、吉田さんは弧を描くようにして、オーボエを左右に振りながら、吹く。
音一粒一粒が、なってるハウスの空間を行ったり来たり、自由に飛び交っているようで面白かったが、音そのものはなんだか竹林に佇んでいるような荘厳さや静寂さを持ち合わせていた。
灰野さんは、1部の中でドラムを長いこと叩いていたけれど(これは意外だった。)灰野さんがドラムを叩くと、バスドラ/ハイハット/スネア/タムと分かれている楽器ではなく、それらが全て繋がった一つの有機体のように感じられて、不思議な心地良さだった。
途中、スティックが折れてしまうのではないか、突き破ってしまうのではないか、と思うくらいの重いドラミング。
1部中盤~、フルート二重奏に。吉田さんは、随所で怒濤のタンギング。細やかさの中に、陰影が見え隠れする。灰野さんは、一音一音をテヌートで丁寧に扱う。灰野さんと吉田さんのフルート二重奏は奇妙は光景ではあったけど、これがまたすごく良かった。
2部は、灰野さんのVoを軸としながら、進む。
「誰 かの うた を なぞ り たく ない」
狂気を帯びた声が訴えかけてくる。
灰野さんは、誰の歌もなぞっていないし、誰の音楽とも似つかない。灰野敬二は、灰野敬二の音楽を続けてきた。それを、観客の皆に、そして音楽を続けてきた自身に、ぶつけているようだった。
とにかく、今日の灰野さんはやりたいことが次から次へと止まない感じで、エネルギーが爆発していて本当に観ていて清々しかった。
ドラム、フルート、エレキギター、椅子をたたく、歌、スプラッシュシンバルを手に持ち木製のハンマーでたたく、など。
アンコールは、灰野さんはやっぱりこれだ、というノイズギターと(足下には6つエフェクターがあったように見えた)、吉田さんの儼呼たるバリトンサックス。
素晴らしいライブでした。